図柄表:セプティミウス・セウェルス帝肖像図柄裏:ウィクトリア女神立像発行地:ローマ帝国ローマ市造幣所発行年:207年銘文表:SEVEVS PIVS AVG銘文裏:PM TR P V COS III PP額 面:デナリウス 材 質:銀直 径:17 mm 重 量:3.38 g 分 類:RIC 211セプティミウス・セウェルス帝は、これまでの皇帝はイタリア出身者から選出されるという慣例から外れた初めてのアフリカ家系の皇帝だった。セウェルスは最も大切にすべきものは軍だと考えていた。これは彼がもともと軍人だったことにもよる。彼は軍団兵の給与を引き上げ優遇した。自身の息子カラカラとゲタにも軍を最も贔屓するようにと遺言したほどである。だが、のちにこの軍の優遇政策が帝国の資金不足を招く最大の要因となる。本貨には、セプティミウス・セウェルスの肖像と勝利の女神ウィクトリアの姿が描かれている。軍人出身のセウェルスにとってウィクトリアの存在は特に欠かせないものだった。皇帝と女神の周囲にはラテン語による銘文が打たれている。銘文は下記の通りである。SEVEVS PIVS AVG PM TR P V COS III PP(セウェルス、敬虔なる者、皇帝、最高神祇官、護民官特権保持者5回、執政官3回、国父) 銘文を観察してみると、従来の皇帝たちに比べ、シンプルで短いものとなっている。「PIVS」は「敬虔な」の意で、この名を用いていたのは、五賢帝の一人アントニヌス・ピウスが有名である。「PM」とは「ポンティフェクス・マクシムス」という役職で、日本では「最高神祇官」と訳されることが多い。ローマ宗教の長であることを示す称号だ。「TR P」とは「トゥリブヌス・ポテスタス」という役職で、侵権を有する「護民官特権保持者」を指す。もともとは政治介入する平民を守るために考案されたもので、暴力によって意見が出せない状況を避けるために設置された。「COS」は「コンスル」という役職で、「執政官」と日本では呼ばれている。ローマ政界のトップの役職で、共和政期では国を動かすリーダーとして国策を切り盛りした。「P P」とは「パテル・パトリアエ」という称号で、日本では「国父」と訳される。この称号自体は何ら権限も持たないが、偉大で畏れ多いイメージを市民に与える意図があった。